母・越子

今日はFさん(80歳・女性)が初めてのデイサービスに行くことになった。
越子は、1週間前から先方の責任者さんと連絡をとり
ケアプランやら、身体や介護などの情報やら保険関係などの書類を送り、
看護・介護・家族・相談員とサービス担当者会議を開いて話しあった。

これなら大丈夫だ。
あとはFさんがその気になってくれて、楽しんでもらえればいい。

いよいよ当日がやってきた。
越子はまるで初めて幼稚園に行く園児の母の気分だった。
持ち物はあれとこれと、迎えは車いすで・・移動はシルバーカー・・
9時に送迎車が到着するから、その前に支度して・・

様子を見るために少し早い時間に居室に行ってみた。
そしたらFさんてば、ベッドでぐうぐう眠っているぢゃないのぉぉぉぉ。
ご飯は全量食べたというので、体調はまずまずってところかな。

「Fさん。さあ起きましょ!デイのお迎えがきますよ」
と声をかけると、寝ぼけ眼で私をぼんやりと見る。
「ええ?だってアタシャ、まだご飯を食べてないよ」
・・・・って、お口のまわりについているご飯粒はなんだい?

介護主任さんが、慌てて櫛を持ってきて髪を梳きながら
「さあさ。お出かけですからね。キレイにしましょ」
というと急にその気になった。
「そうかい?じゃあカーディガンを着ていこうかね」
さすがだなあ~。

いざ、出かけるときになったら
「やっぱり行かない」とだだをこねだす。
皆して、「行ったら楽しいよ」「お友達が待っているから」と諭す。
心の中で(行ってくれ~、行ってくれ~)と祈る。

なんとか送迎車に押し込み、手を振って見送る。
半分ホッとして、半分祈る気持ちである。
「どうか、いい子にして楽しんできて~」

お昼を過ぎて、どうしているかと思っていると
先方の責任者さんから電話が来た!

「Fさんのことなのですが、落ち着きがなく多動なので
危ないと注意したり制止すると、怒ってしまって職員に乱暴するのですよ。
かみつく・ひっかく・つねるという行為なのでとても危険です。
他の利用者さまに危害が加わると困ってしまうので
申し訳ないのですがお断りさせて頂きたいと思います」

ああ~・・
やっちまったか~・・がっかり。

ここでもそういう行為があったものねえ~・・
でも他所へ行くと、よそ行きの顔になって大人しかったりするものだけど。

Fさんは頑固だからなあ。

よくホールをでウロウロしているから
「娘さんが(面会に)来るから、帰りましょう」
と手をつなぐと、迷子になった幼児みたいに
「ほんと?じゃ、連れてって・・」
と涙目でぎゅっと手をにぎってくる。

寂しいんだな、Fさん。
家族に捨てられるんじゃないかって、心配でしょうがないのね。
娘さん言ってたもん。
「とてもじゃないけど、家では見られない」って。
Fさん、いつも家に帰りたいって言ってるもんね。

可哀そうだけど、どうしてやることもできない。
ただ、ここにいる限りは、なんとか寂しさを埋めてやれればいいなあ。

現役で働いているときは社会や家族などからとっても必要とされてきたのに、
退いたとたん無用になってしまうのは辛いことである。

生きている中で、一番悲しいのは、する仕事がないことだというけど
あれって、本当に堪えると思うな。

しかし、おむつのパッドを水洗トイレに流さないでくれ~・・
う○ちを手でこねこねしないでくれ~・・
そしてその手でご飯をつかんで食べないでくれ~・・




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コメント

No title

どうすることもできないねぇ。
子供が面倒見きれないって言うのも寂しいね。
アタクシは入院中に、いろんなお婆ちゃんに会ったけど
みんな「家に帰りたい」だったよ。
ボケた人は家に帰れなくて、ボケていない人は家に帰れるの。
そんな構図ができあがっていたよ。
どうしたもんだろうね。

No title

他人の不幸は蜜の味と言うが・・・最後の3行は、ご同情申し上げます。
私もこうならないように、そろばんでも習うかな・・

No title

はるさん。
家ほどいいものはないよね。
ほんの数日 旅行に行ってきても家に帰るとほっとするもんねぇ。
住み慣れた家に帰りたいのは当然のことだよね・・
でも、家で暮らすにはあまりにも大変すぎる・・
どうしたらいいんだろう。

のごまさん。
ご飯はもうすみましたよ、忘れちゃいましたか?
う○ちをコネコネしないでね、くちゃいから。
オムツをはずしちゃ困ります。
なんて、言われないようにね。

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